実は僕は千代田区に住むのは2度目である。
1度目は宮崎から上京し、大学に入学した年。九段南にある宮崎県東京ビルの宮崎県東京学生寮に1年間住んだ。2人部屋で家賃はなんと月1万円!1年たったらどこかに引越さなければならない(当時)。要するに田舎から出てきた学生が大都会になれるまで格安で住む場所を提供するというシステムで、かくして東大・早稲田・東工大・一橋等々の東京の大学生となった田舎モノの学生たちは、いきなり東京のど真ん中に住むことになる。 宮崎県東京ビルというのは、本当かどうか確認していないが、かつての小村寿太郎屋敷後とのこと。近くの東郷公園は、日露戦争のときの東郷平八郎の屋敷跡。参勤交代の江戸屋敷とその藩士の家が集まっていた九段、麹町界隈は、そういう○○県東京会館なるものが多数ある。 で、そのときの千代田区での生活は、僕にはとても不便であった。 何しろ大学まで遠い!市ヶ谷から小平の大学まで通うのはシンドイの一言に尽きる。土日になると、学生にとっては格安に食事ができる店もない。靖国通りは右翼の宣伝カーが五月蝿く、せっかくぐっすり寝ていてもたたき起こされる。貧乏学生でカネがないから、どこに行くにも地下鉄に乗らねばならない千代田区は本当に不便だった。その翌年国立に引越すのだけど、大学の傍に住むとアルバイトでもない限りは電車にも乗らないですむのは、なんと楽だと思った。学生向の安い飲食店もある。九段からの脱出!それは相部屋からの自由な1人暮らしへの解放感も伴って、僕は以後、自分が千代田区民であった過去をすっかり忘れ去った。 それから20年。こうやってまた千代田区民になってしまったのだが、これが意外や意外に、学生時代とは正反対で、子育て共稼ぎの世帯にとって、なんとも過ごしやすく、よい環境なのである。 まず、経済性。 もちろん住むのはちょっと高い。でもそれを補ってあまりあるのは子育てのコスト。 たとえば認可保育園の保育料が、同じ5歳児でも 横浜市 35,500円/月 千代田区 18,000円/月 となる。加えて職場からの近さはありがたい。子供を19時あるいは20時に迎えにいくならば、横浜ならば1時間前には東京の職場を飛び出ないといけない。途中で電車が止まったらもう間にあわない。ベビーシッターを依頼すると、安くても1回2千円以上がかかる。そういう風に、横須賀時代が月9~10万円、横浜でも月8万円はかかっていた費用が半額以下になった。 小学校に入学すると、実は夜まで預かってくれる保育園が、小学1年生は午前中で授業が終わってしまう!とにかく19時までどこかに子供を預けなければならないのだけど、この学童保育がどこでも悩みの種。運営している人たちには本当に頭が下がるのだけど、横須賀も横浜もなかなか理想的とはいえず、学校では預かってもらえないルールだそうで、遠くの公民館などまで通わせるの迎えに行くのも、親も子供もとても大変だった。 ところが東京都の小学校は学校がそのままアフタースクール(学童保育)になってくれる。あるいは複数の小学校合同の児童館を選ぶこともできて、頼めば夕食まで出してもらえる 。しかも値段はここに書けないくらいすごく安い。 小学校卒業まで月5千円の子育て補助がでるとか、医療費が減免されるとか、いろいろサービスがあるらしいけど、要するに子供が少なく、法人住民税が豊かな区は、子育てがしやすいような様々な制度を整えやすいのだろう。 正直言って、こんなに違うものかと思うくらいに子育てのコストはリーズナブルである。 しかも、リーズナブルといっても教育のレベルは悪くない、というかかなり高いみたい。 これまで認可保育園とはいえ、横須賀も横浜も割高な私立に行かせていた。夜8時まで保育が延長できるし、いくつか見学したけれども、あきらかに私立の保育園のほうが保育士の先生方が熱心だったから。ところがこちらに転居して、区立保育園を見学したら、これが遜色ないくらいにいい感じ。 横浜の時には、元来田舎モノの僕には、小学校から私立というのはそもそも何じゃらほいと公立が当たり前と思っていたが、実は保育園の父母会で話をきくと、要するに公立の小学校では教育の品質にバラツキが激しく、時にはまともに教えられる環境でないことも多々あるとか。だから高学歴をめざすというよりも、安心して子供を通わせるという視点から私立を考える親が多いとのこと。そう聞くと僕もちょっと心配になったのだけど、共働きで私立に子供を通わせるのは、時間的にもほとんど不可能だった。 ところがこちらに越してきてみると、小学校も近所の番町、九段、麹町という区立小学校はどれも歴史ある名門らしい。先生も父兄も異常に(!)熱心で、施設をはじめ「どこの私立か?」と思うくらいに恵まれている。たしかにわざわざ越境してくるのもわかる。お受験して私立に行かせるときの経済的な負担を考慮すれば、九段や麹町界隈への引越し代と家賃の増加分を比較してもお釣りがくるのだから。 ということで、経済的な効果は予想より大きかったのだが、実はそれだけではない。 もっと僕にとっては嬉しいことがあった。それはまた明日。
by haruyamablog
| 2006-09-15 01:32
| 子育て
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春山祥一 プロフィール
銀行員を12年やって2002年にITベンチャーに転職しました。
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